甲子園が近づくにつれてわいてくる、県外出身の球児を”外人”とか言う人へ

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毎年、夏の甲子園が近づくにつれて増えてくるのが、野球留学に対する心ない中傷の声ですが、もうそういう発想自体、恥ずかしいものなんだと気づいてくれないものですかね。

今時”外人部隊”なんて言葉を使っている人がいたら、ろくに高校野球を観ていないことが丸わかりなので、相手にしない方がいいです。たぶん、野球じゃなくて、地元が好きな人なんだと思います。

そしてもし、県外出身の球児に対して何らかの偏見を持っている人がいたら、認識を改めたほうがいいでしょう。

球児には、指導者や環境を選ぶ自由がある

まず、球児の立場から見た、野球留学について。

プロを目指すような才能ある球児にとって、貴重な3年間をどの高校で過ごすか、というのは、将来を左右する極めて重要な決断なわけです。

どの指導者の元で、どんなチームメイトと、どういった環境で、自らを鍛えるか。彼らは真剣に考えます。この3年でどれだけ自分を伸ばせるか、そうして得た能力をアピールできるか、なるべく幅広い選択肢が用意されるべきでしょう。

それが、自分の生まれた都道府県に限定されるとしたら、その選択肢は狭められてしまいます。

将来を見据えて真剣に進路を選ぶのは、勉強でもスポーツでも一緒。そんな高校生(というか決めた時は中学生)の選択を揶揄する人の気が、僕には理解できませんね。

高校の部活動に何を背負わせているのかは知りませんが、才能ある若者を地元に縛りつけて、将来の可能性を奪ってまで、守らなければならない”地元”ってなんなんでしょう。実際のところ、守るのとは真逆の結果をもたらすように思えますが。

才能ある球児が、自らを高める環境として、地元を選んでくれたことを誇りに思う、なら理解できるんですが……

地元の球児は本当に”可哀想”なのか?

野球留学に対する批判でよくあるのが、レギュラー入りしやすいから、そして甲子園に行きやすいから、強豪の少ない都道府県に来たんじゃないか、というものですね。

別に大学だって、全国から自分のレベルに合った場所を選んで進学するわけですし、僕は別にそれがイケナイとも思いませんが、それが気に食わない人もいるようです。なぜかというと、一生懸命頑張っている地元の球児が甲子園に行く機会を奪うから、だそうです。

実際、才能のある中学生のなかには、地方の強豪なら絶対レギュラーになれるし、甲子園にも行きやすい、と思って、ナメた気持ちで進学してくる人もいるそうです。

そういう、勘違いしてしまった選手というのは、高校では伸びないんだそうです。才能だけで上手になれるほど野球というスポーツは甘くないんですね。才能のある人が、努力をし続けて初めて、高い技術を身につけることができるんです。

才能、と言いましたが、これは別に、生まれつき上手い、とかそういう話ではないんですね。中学の時点で実績を残している人は、これまでみっちりと努力してきています。だから上手いのです。

そして、進路を真剣に考えて選んだ高校に入れば、またこれまで通り努力をします。

これが、才能にあぐらをかいて努力を怠り成長を止めてしまうと、すぐにレギュラーの座はチームメイトに奪われてしまうでしょう。それぐらい、上手なままでいることは難しいんですね。どんなスポーツにも言えることでしょうが、努力に勝る才能なしですね。

で、そういう選手の頑張りを見ると、地元出身の選手も燃えるんですよ。それまで触れることのなかった、全国レベルの技術や意識を肌で感じることで、意識が変わるんです。それがきっかけで才能を開花させる選手もいます。

また、野球留学生が周囲に与えるいい影響は、自分のチームだけではありません。県内外から実力のある選手が集まる強豪校と対戦することは、地元出身の選手だけで構成されたチームにとっても、いい経験になります。ボコボコに打たれても、奮起の材料となるでしょう。

普通の高校、とりわけ公立校にとって、わざわざ県外まで出向いて強豪と練習試合をする機会はそれほど多くありません。コネクションも必要でしょう。ですが、全国レベルの強豪校が県内に存在すれば、公式戦で対戦できるわけです。

県外出身者が多いチームは、地元ではヒール扱いなことが多いですが、そうしたチームが県全体のレベルを引き上げる要因となっていることは間違いないでしょう。

地元出身者のみで囲い込んで、地元選手を”保護”するのがいいのか、それとも垣根を取っ払って、より高いレベルで成長できる厳しい環境を用意してやるのか、どちらが球児にとっていいのか。悩むまでもないでしょう。

まあ思い出作りのための部活動、という考え方も否定はしませんが……「本気で野球で食べていこう」と考えている人の選択肢とどちらを尊重すべきか、と言えば、僕はやはり後者を推したいですね。

彼らはそこに住む

まさかこんなこと知らない人はいないと思うんですが、野球留学してきてる選手って、親元を離れて、寮に住むわけですからね。試合の時だけフラッとやってきて、チームにポンと入れられてプレーするわけじゃないんですよ。

1年生の頃から仲間と生活をともにして、チームとして成長していくわけです。上手な選手が入れば、いきなりチームが強くなるということはないです。

3年間住んで、そこの空気を吸い、食べ物を食べ、文化風土に触れながら、野球に打ち込むわけです。

思春期ですから、野球に限らず、様々な悩みも抱えるでしょう。そんな多感な時期をその地で過ごしているのに、その地元の人々が、”よそ者”扱いするなんて、酷すぎやしませんかね。

ていうか、今時、大人に対してもそんな露骨な出身差別をするケースなんて稀ですよ。それが、高校野球になると公然と行われるんだから不思議なものです。

高校野球は「高校のクラブ活動」です

高校野球が、単なる高校の部活動だってことを忘れている”ファン”が多いんですよ。大々的に中継されたりするから、プロ野球感覚でプレーに野次を飛ばしたりする人が現れるのも分からないでもないんですが、その考えは間違っていると断言できます。

だいたい”高校野球ファン”なんて、所詮「勝手に高校生の部活動を覗いている近所の人」と何も変わりませんからね。

高校生からしてみてら、そんなヤツらに、よくよく考えて決めた進路のこととか、文句言われたくないじゃないですか。プロじゃないんだから、部外者の一般人に、将来に関わるような選択について、あれこれと口を出される筋合いは無いわけです。

当事者の選手、まあ百歩譲ってその保護者が口を出すのは心情的にはわかりますよ。しかしまったくの部外者が何様のつもりだ、って話ですよ。

県の代表として地元を背負って、という形式にはなっていて、マスメディアもそのように扱いがちではありますが、それは外野が勝手にそういう取り上げ方をしているだけです。

また、地元が何かしら協力しているとしても、部外者は部外者なのです。恩着せがましく口を出すのなら、そんな協力はありがた迷惑でしかないでしょう。

もちろん、高校生はそんなこと絶対口にはしないし、思ってもいないでしょうが。むしろ強豪校の選手は、「礼儀正しい」と地域住民が感心していることも珍しくありません。僕は、別に無理に地域住民に気を使わなくてもいいから、大好きな野球に打ち込みなさい、とさえ思っていますが。

地元ファンの叱咤激励が選手の力になることもある、ということは否定しませんが、だからといって誹謗中傷が許されるわけではありません。あくまで勝手に見させてもらっている、という意識を忘れずに、観戦したいものです。

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