こやつは上様ではない

その金さんとやらを呼んできてもらおうじゃねえか

料理マンガの巨匠・ビッグ錠の”新作”が読める街・湘南台

   

いやー事件ですよ。僕の住んでいる湘南台には、グルメ漫画のレジェンド・ビッグ錠先生が住んでるんですよ。そのビッグ錠先生のイベントと展示が、湘南台駅地下通路のイベントスペースで、なんと10日間にもわたって開催されるって言うじゃないですか。

君は「ビッグ錠」を知っているか?

ビッグ錠先生を知らない人に簡単に紹介すると、ズバリ「料理対決」マンガの開祖です。まあ厳密にはそれ以前に1つか2つ料理マンガがあったらしいんですが、今でも語り草になるぐらいヒットした作品はビッグ錠先生の『包丁人味平』(1973年・原作/牛次郎)ですから、創成期を牽引し、今に繋がる料理漫画の”型”を確立させた漫画家であることは間違いないでしょう。

聴衆の前で解説者をつけて料理を競うという形式は、ビッグ錠先生が最初です。この形式はマンガだけでなく、テレビ番組などにも影響を与えました。一世を風靡した『料理の鉄人』はそのまんまだし、最近惜しまれつつ解散したSMAPが長年やってきた『ビストロスマップ』だって、シャレオツにアレンジされてはいますが、この形式を踏襲しています。

つまりビッグ錠先生を知らないヤングも、その偉業にはすでに触れているのです。国民的アイドルの活躍を陰で支えていた、と言ったら過言でしょうか?

さすがに過言だと思います。

真顔で真剣なのに、とんでもない方法でとんでもない料理を作る

ここまではビッグ錠先生が社会に与えた影響についてでしたが、ビッグ錠先生がそこまでの影響力を持つ理由は、もちろんマンガの内容にあります。

まずは原点にして至高の『包丁人味平』。和食の名人の息子・味平は、大衆の舌を満足させる洋食に理想を見出し、反対を押し切ってコックの道に進みます。そして、町の洋食屋での厳しい修行や、次々に現れる個性的なライバルとの料理勝負、過酷な特訓を通じて、料理の腕を上げていく、という熱血料理マンガです。

テーマは料理なんですが、ノリは当時隆盛を極めていたスポ根モノなんですよ。劇画タッチで、登場人物たちは大真面目なんですが、調理の様子や、出来上がった料理、アイデア、その全てが常人の想像のはるか斜め上を行っている。

インパクトのあるライバル、料理、たくさん出てきますが、このマンガ一番の問題料理は、一度食べたら何度もリピートしたくなる中毒性の高い「ブラックカレー」でしょうね。この、大して美味くもないコールタールみたいなカレーの中毒性の秘密は、ずばり違法ドラッグですからw

料理対決の結末が、禁止薬物で逮捕、なんて後にも先にもこのマンガだけなんじゃないでしょうか。最初に読んだ時、マンガの続きよりも、知らずに食べ続けていた常連客のその後のほうが心配だったことを覚えています。

このブラックカレー、1月27日に放送された「マツコの知らない世界」で取り上げられてましたが、さすがにゴールデンタイムの番組でこの”隠し味”は問題があると判断されたのか、ドラッグのドの字も出てきませんでした。

僕が一番最初にビッグ錠先生を知ったのは、この『スーパー食いしん坊』でした。

洋食屋の息子で、料理は食べるのも作るのも大好きな中学生・鍋島香介が、腕は確かだがどこか鼻持ちならないプロの料理人たちに料理対決をふっかけ、奇抜な発想で勝利していく、というもの。『包丁人味平』が(読者の印象はともかく)本人たちは大真面目な熱血マンガだったのに対し、この『スーパーくいしん坊』はギャグテイストが強まっています。いや、本人たちが真面目なのは変わりないんですけどね。

それでも、シリアスな劇画タッチで”あんな感じの”調理方法と料理ですから、面白くないわけがありません。洗濯機でラーメン作ったり2つのドラム缶で挟み込むようにして肉を焼いたり、と「いくら美味くてもそれいいのかよ」って感じで、振り切れちゃってます。「キッチン食いしん坊」、間違いなく保健所には睨まれてたでしょうね。

とまあ、その辺へのツッコミは野暮というもの。料理のアイデア、という面で、この頃のビッグ錠先生は包丁人味平の頃よりも冴え渡っていたんじゃないでしょうか。


先に紹介した2作品は漫画原作者・牛次郎とのタッグでしたが、この一本包丁満太郎はビッグ錠先生の単独作品です。カツ丼屋の息子が、遊び人から心を入れ替え料理の道を志す、というストーリーで、まあ包丁人味平に近いストーリーです。

このマンガもビッグ節が炸裂しているわけですが、一番有名なのは間違い無く「全日本おにぎり選手権」でしょうね。全国各地から集った凄腕の”おにぎり師”たちと対決するんですが、こいつらが見た目から握るおにぎりから、もうとにかくメチャクチャだったり、大きく出たわりにはショボかったりで、もう気を抜く暇がないぐらい笑えます頭にカニをかぶったシースルーシャツの透け透けオッサンとか、頭の上に載っけてきた朝採れ山菜を混ぜ込んだおにぎりとか、本気で勝つ気あるのかよ、って感じで。

この作品は10年以上連載が続いた人気作で、ビッグ錠先生の料理マンガでは唯一、アニメ化されています。OVAなのでそれほど知名度は高くないんですけどね。しかし、もしスーパーくいしん坊あたりがアニメ化されていたら、絶対にウケていたと思うんですが……これは信奉者ゆえのバイアスなんでしょうか。フラットな評価ができない私を許して下さい。

また料理漫画ばかりが目立つビッグ錠先生の著作ですが、料理以外のものをテーマにしたマンガもたくさん描いています。

この『パソコンワールド』は1986年の作品。まだインターネットではなく”パソコン通信”の頃だと思うんですが、すでにサイバー犯罪やらなりすましやら現代のネットトラブルを先取りした内容です。料理マンガとはまた違ったテイストですが、ビッグ錠的世界観、ビッグ錠ワールド的ストーリーで描かれています。必読ですよ。

本当に作れるの?美味いの?

話を料理マンガに戻しましょう。これらの料理マンガを読むと湧いてくるのが、「この料理は本当にオイシイのだろうか?そもそも作れるのだろうか?」という疑念です。

答えは、イエスであり、ノーです。作れるものもあれば、作れないものもあります。美味しいものもあれば美味しくないものもあります。

でもねえ……そんなことはどうでもいいんですよ。読者が見て「美味しそう!」(あるいは「イカれてやがる!」)と思えるかどうかの方が、料理漫画にとっては大事なことなので。

実はかつて、テレビ番組の企画で、ビッグ錠先生のマンガの通りに作ろうとして失敗してるんですよ。たしか伊集院光の番組だったと思うんですが。

あの一件以来、「ビッグ錠先生は、マンガの料理を実際には作っていない」などと指摘されているし、ビッグ錠先生自身も、実際に作っているわけではないことを明かしたりもしているみたいですが、僕はかえって尊敬の念を深めたものです。想像力と表現力で、存在し得ない料理の美味しさを、読者に伝えたわけですから。実現できる料理だけ扱っていては、ビッグ錠ワールドは成立しないのです。

出来上がった料理がどれだけファンタジーでも、正直微妙な印象しか抱けない代物だったとしても、そうした疑念は「うんめぇー!」の1コマで雲散霧消します。「この顔で美味いって言ってんだから絶対に美味いに違いない、間違っているのは俺だ」という、洗脳に近い説得力がありますね。「うんめぇー!」には。

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ここまで大々的なイベントは初?

実はビッグ錠先生、月イチで催される駅前のイベントなんかにもちょくちょく顔を出されているので、住民にとってはそれほど珍しくは無いんですよ。

湘南台の街がとても好きということで、まちづくりにも積極的に関わっていますしね。いい意味で、ごく普通の住民なわけです。

でも、ビッグ錠先生をメインに据えて、豪華ゲスト呼んで、立派なポスターまで作って大々的に催されるイベントは初めてなんじゃないですかね?少なくとも、僕がここに住み始めてからのおよそ10年間で、この規模のイベントが開かれたという記憶は無いです。

それにしてもすごいのはこの内容ですよ。

まず、2月19日(日)の13時から「グルメマンガ家たちのグルメ会議」。出演はビッグ錠先生と親交のある倉田よしみ先生土山しげる先生。倉田よしみ先生は名著『味いちもんめ』の作者、和食や板前の技を描かせたら、右に出るものはいないでしょう。土山しげる先生は『喧嘩ラーメン』『食キング』など次から次へとヒットを飛ばし続ける、押しも押されぬ現在進行形のグルメ漫画の第一人者

グルメ会議ということは、料理について語るんでしょうか。それとも料理マンガについて語るんですかね。どちらにせよ意義深い会議になることは間違いないでしょう。14時半からはサイン会もあるそうです。家宝を手に入れるチャンスですね。

翌週2月26日(日)の13時からは「昭和のマンガあれこれ」。出演は、川崎のぼる先生南波健二先生、そしてビッグ錠先生です。川崎のぼる先生は言わずもがなの『巨人の星』(原作は梶原一騎)。『巨人の星』って、全世代でアンケート取ったら、日本一知名度の高いマンガじゃないですかね。CMとかでもいまだに使われますしね。南波健二先生は、さいとうたかを先生の流れを汲む正統派劇画の大家で、『黒バイ将軍』『処刑人ゴッド』などのヒット作があります。

黎明期のマンガ業界、とりわけ劇画界隈って、梶原一騎先生が絡んでたりすることもあって、結構キナ臭い話が多い印象なんですが、日曜の昼下がりに駅地下でどこまで話せるか、期待しかありません(いや、そんな話になるのかどうかは分かりませんがw)

まあでも、ビッグ錠先生もGIに才能を認められたのがマンガ家を志すきっかけになったという話だし、社会全体が破天荒な感じだったので、普通に裏話を語るだけで、めちゃくちゃおもしろいでしょうね。こちらもサイン会があります。川崎先生は熊本在住ですからね。

湘南台駅地下通路の広いスペースでの開催なのでアクセスも良いので、ぜひ多くの人に来てもらいたいですね。

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”ビッグ錠で満たされた街”湘南台


ところで、この地球儀みたいなキャラクターは「ゆめまる」と言いまして、お察しの通り、湘南台のマスコットキャラクターです。「ゆめみん」というガールフレンドがいて、街のイベントにも”実物”が登場するんですが、ちょっと前までは紙のボディだったんですよ。

なので、耐久度の点で傍から見ていて非常に心配なキャラクターだったんですが、地域住民から多額の寄付が集まり、昨年ついに着ぐるみへと生まれ変わりました。今は安心して見守ることができますw

湘南台にはこの「ゆめまる」を筆頭に、ビッグ錠先生を感じるデザインがそこかしこに見られます。これなんかも、分かる人なら一瞬で分かる”ビッグ錠テイスト”な看板ですよね?

ビッグ錠先生の”新作”が読めるのは湘南台民だけ!

ここでようやくこのエントリーのタイトルを回収するんですが、「湘南台地区郷土づくり推進会議」という市民参画の団体があるんですよ。自治体と住民が協働してまちづくりしていきましょう、という趣旨の団体だと思うんですが、ここが発行する広報紙「ゆめたま」に、ビッグ錠先生が4コマ漫画を”連載”しているんですよ。

プロの漫画家としては一線を退いており、現在は雑誌等への連載はしていないビッグ錠先生ですが、この「ゆめたま」には新作マンガを寄稿しているわけです。不定期ではありますが。

そしてこの広報誌、湘南台地区の各自治会を通じて、家庭に無料で配布されています。

つまり、湘南台地区の住民には、ビッグ錠先生の新作マンガが、無料で家に届けられているというわけです。

僕のようなビッグ錠ワールドに魅せられた人間なら、これがどれだけ貴重なことかが分かるでしょう。

飲食店とのコラボを夢見て

ところで、せっかく料理マンガなんだし、湘南台の飲食店とコラボとかやってくれないですかね。ビッグ錠作品のあの料理が食べられる!みたいな。

実現可能か、もし実現しても、本当に食べたいのか、と言われると、どの料理がコラボの対象になるのかは、かなり吟味しなければならないでしょうけど。

『スーパーくいしん坊』に、鉄板ではなく車のホイールで作ったお好み焼きを病院食として振る舞う回があるんですが、まず湘南台にある病院の食事を、この「スーパー回転お好み焼き」にするところから始めてみたいですねー。リアルでやったら、病院として終わる気がしますが。

ともあれ、外せない用事が無いかぎり、このイベントには確実に足を運ぶと思います。もちろん後日ブログでリポートもしたいと思います。楽しみだなあ。

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